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多芸は無芸

Category: レビュー

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赤い砂漠

「赤い砂漠」


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
ミケランジェロ・アントニオーニが手掛けた初のカラー作品。巨大な工場が排煙を撒き散らす港町を舞台に、神経症を病む女性の心象風景を豊かな色彩で表現した異色のドラマ。アントニオーニ作品の常連、モニカ・ヴィッティ主演。


泣きました。

お涙頂戴系の映画を見たときに流れる涙とはまったく別の種類の涙です。
心臓からジワジワと絞りだされたような痛い涙です。


―私を愛している人たちを、一人残らずそばに置きたいの

(壁にもたれかかる)

―壁のように 

人物をとらえるカメラアングルが、対象がなんなのかわからないくらい近づいたり、かとおもえば声も届かないくらいのロングショットになったり安定しません。
揺らぐ、途切れる、見えなくなる。
世界との付き合い方がわからない主人公の心情そのものである気がしました。

夫も他人のようだし、幼い息子には欺かれ(学校ずる休み)、愛しかけた男性もまた去っていきます。
大きくうなりながら黙々と稼動し続ける工場の機械と、どうしてよいのかわからず風のように不安定に揺らぐ主人公。

突然、自分以外の全ての人との間に引かれる境界線。
身近な人までも隠してしまう、濃い霧が急に立ち込める。
残るのは殺伐とした風景。

逃避しようと船に乗りかけるも決心がつかない。

説明くさいシーンやセリフはないのですが、主人公のつぶやく一言、また色彩と音楽(効果音)によって、どうしようもないくらいの孤独感、不安感が伝染します。


中盤に、息子に物語を聞かせる場面があるのですが、そこは唯一穏やかです。
ある少女がいました。
人間とうまく付き合えない少女は動物たちと仲良くしながらひたすら青い海で泳ぎます。
ある日大きな船がやってきました。
遠くから眺めると美しく見えたので、泳いで近くまで寄ってみると不気味でした。
仕方がなく砂浜に戻ると、どこからともなく聞こえる揺らぐような優しい歌声に気付きます。
しかし姿はどこにも見つからない。
海の中、岩のかげ、砂浜、空から?

―誰が歌ってるの?

―みんながよ

この「みんな」っていうのはどういうことなのかわかりませんでしたが。



んで、救いか悲劇かはわかりませんが、結局は。
結局は最初から最後まで何も変わらない同じ日常なのです。

この映画のテーマは「社会に対する不安」とか「コミュニケーションに対する不安」とか「現代人の孤独」とかいわれているようです。


自分の精神的に一番きつかった時を思い出しました。

なんとか歯車がうまく動き始めると、突然全てがバッラバラになるあの感覚。

ああ、やっぱり身体にまで影響及ぼす映画だった。



・・・ラミ子でも見て癒されようっと。


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アネオErica

Author:アネオErica
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